大和市民活動センター


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★第47回連続共育セミナー

「引地川にトンボが戻ってきた!」
  〜継続した市民活動からみえてくるもの〜

 

2011年11月26日(土)10:00〜12:00に行われた連続共育セミナーの内容(概要)をお伝えします。

 

お話:飯塚栄子さん (「引地川かわくだり実行委員会」代表・「柳とあそぼう引地川」トンボ調査隊員)


子どものころから、自然大好き。大和に引っ越してきて、引地川と出会う。子どもたちと物語を英語で遊ぶ、ラボテューターが本業。出身は静岡県清水、駿河湾のほとり。 家族は夫、娘、雑種犬、ハコガメ。

 

内容

自分の街を流れる引地川を「きれいな川」にしたい!!川に入ってゴミを拾い、川で遊ぶ『引地川かわくだり』も今年に入って22年目を迎えました。 活動15年目の年、大和市で一度は絶滅したといわれたハグロトンボの大復活を確認し、調査をはじめました。そして、今。引地川はオニヤンマ、ミヤマサナエなど色々な種類のトンボが棲む川になりました。継続した活動からみえてきた引地川の変化を、たくさんのトンボの写真とともにお伝えしたいと思います。

 

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第1部 「引地川かわくだり」について

 

(「引地川かわくだり」を始めるまで)

 

引地川は全長21.4kmの短い川です。昭和32年の写真では引地川の周りはのどかな田園でした。その後都市化が進み、川がコンクリートで固められてゴミがどんどん捨てられるようになりました。今から20年以上前は合成洗剤の泡がブクブクとしていました。

 

その頃、森清和先生をお招きした勉強会で、先生の「どんな汚い川でも入らなくちゃ!遊ばなくちゃ!」というお話を聞いて1990年から「引地川かわくだり」を始めました。毎年7月に川の中に入ってゴミを拾い、川で遊ぶ活動です。

 

活動の3本柱
・川の中を歩いてゴミをひろう
・川であそぶ
・生き物調査、水質調査

 

当時、大和市にふれあい広場の公園を改修する計画があり、要望書を提出したところ、三面護岸のコンクリートを剥がして、自然に戻した護岸をつくる改修をしてくれました。その時には自然を生かした川づくりに興味を持っていた職員の方がいて、そこに市民からの要望があったということで実現したことでした。三面のコンクリートを剥がして自然に戻したのは日本で初めての事例でした。1993年には植えた草の根が定着して、安心して遊べる水辺が生まれました。

 

「引地川かわくだり」は年1回の活動ですが、やっていると市民のみなさんもゴミのことなど気をつけてくれるようになりました。第1回目は川に浄化槽が落ちていて、引き上げてリヤカーで運びました。第4回目になると、大和市が2tトラックを出してくれました。


拾ったゴミの量…回を重ねるごとに減ってきています。
第 9回 500kg
第11回 300kg
第21回 100kg
第22回 70kg

 

引地川が清流を取り戻すためには、3つのことが必要でした。
・下水道の整備
・河川改修の努力・・・・・・河川改修で土を埋め戻す作業をしてもらえたことで、川原が創出されました。
・市民の継続的な活動・・・私たちの川をみんなの手できれいにする活動を継続しました。

 

引地川では「引地川水とみどりの会」が年11〜13回、ゴミを拾って川をきれいにする活動をしています。「柳とあそぼう引地川」はふれあい広場のところで柳の剪定と草刈りをしています。いくつものグループの活動で引地川はきれいになり、人間には潤いを与え、生き物には棲みかができることになりました。

 

 

第2部 引地川のトンボたち

 

(ハグロトンボ)

昔、引地川には「ハグロトンボ」がたくさん生息していたそうですが、昭和55年以降は見られていないと「大和市の絶滅危惧種」という冊子に載っています。「引地川かわくだり」が第15回目を迎えたとき、区切りとして「かわくだり」は終了する予定でした。そこで最後は盛大に行おうということで、いろいろなグループに声を掛け、かわくだりの部分をこれまでの倍にして、引地川の大和市を流れる部分全部で行いました。これまでのかわくだりでもハグロトンボが1頭飛んでいるのを確認した、ということはありました。それがこの第15回目の時にはハグロトンボがあっちにも、こっちにもヒラヒラと飛んでいて20〜30頭ほどはいるようでした。大和市では絶滅したといわれていたハグロトンボがこれほど多く見られ、きちんと調査をしておくべきだと考え、2004年にはハグロトンボ調査を始めました。

 

ハグロトンボ調査では、中学校教諭の田口先生に指南を受けました。田口先生は「神奈川県で『トンボ』といったらこの人」と言われているほどトンボに詳しい方です。トンボ調査では「人数を揃え、時間を揃え、オス・メスを数える」と習いました。2004年の調査では552頭を数えました。これが神奈川新聞の記事になったことがきっかけとなり、横浜でも調査が始まりました。

 

2006年 884頭
2008年 1130頭
2010年 1731頭
2011年 270頭

 

順調に増えていたハグロトンボでしたが、今年2011年は少なくなっていました。これは昨年12月に豪雨があったことでハグロトンボが卵を産む水草が流されてしまったことが原因ではないかと聞きました。

 

(ヤゴの調査とトンボの調査)

2006年からはハグロトンボのヤゴの調査も始めました。トンボの調査は毎年同じ人数で行わなければならないため、新しく参加してもらうことができません。ヤゴなら人数を増やして誰でも参加できるので始めました。ヤゴの調査ではオスとメスの数と大きさを調べます。2007年6月の調査では変なヤゴを見つけました。調べるとコオニヤンマとオニヤンマのヤゴでした。2007年にはまだこの2種類のトンボは見ていませんでしたが「ヤゴがいるということはいろんなトンボがいるのだろうか?」と思い始めました。かわくだりやハグロトンボ調査の時に、シオカラトンボや他の種類のトンボも増えていると感じていました。トンボの調査をやってみたいと思いながら1〜2年が過ぎた頃に、清水頭さんというトンボ好きな大学生がボランティアとしてかわくだりに参加したことから、今年2011年に清水頭さんが組み立てをして「引地川トンボ調査」を開始することができました。

 

(引地川のトンボたち)
トンボ調査の結果、たくさんの種類のトンボが引地川で生息していることがわかりました。

・シオカラトンボ (目は緑色)
・オオシオカラトンボ (目は黒色、シオカラトンボと似ているが、シオカラトンボよりずんぐりしている)
・オニヤンマ (日本で一番大きなトンボ、顔が鬼の形相をしていて目が離れている、オニヤンマ科)
・オオヤマトンボ (オニヤンマとそっくりなトンボだが光沢がとてもきれいなトンボ、エゾトンボ科)
*泉の森で見られました
・ギンヤンマ
・コシアキトンボ (腰のところが白く色が抜けている)

 

赤い色のトンボ・・・赤いトンボも若い時は黄色く、どんどん赤くなって死ぬ前が一番真っ赤になります。
・ショウジョウトンボ
・アキアカネ (山の高い涼しいところで生活していて、秋に低いところに降りてきて目にすることができる)
* 10/20も確認しました
・ナツアカネ (アキアカネと見た目はそっくりだが生態は全く違う。引地川では9月に一瞬だけ見られました)


羽の先が茶色い3種類のトンボ
・ノシメトンボ (オスはだんだん赤くなってくる。メスはずっと橙色のような色をしている)
・コノシメトンボ ( 上記と同じ )
・リスアカネ 

 

・マユタテアカネ (神奈川県の要注意種、親水広場で確認)
・ネキトンボ
・マルタンヤンマ

 

水がきれいなところでしか住めないトンボ
・ミヤマサナエ (2008年のハグロトンボ調査の時に、初めて見るトンボとして写真を撮って調べた。引地川にいろんなトンボがいるかもしれないと思うきっかけになったトンボ)
・オオガサナエ
*サナエトンボ科は水質がきれいなところでないと生息できないので、サナエトンボがいるということは、水が本当にきれいということになります。
・コオニヤンマ (草柳で岩の上に止まっていることが多いです。コオニヤンマは水質が「割合きれい」というレベルで一定していないと生息できないので、コオニヤンマがいるということが水がきれいということになります。)
・ウチワヤンマ

 

イトトンボ系
・クロイトトンボ
・アオモンイトトンボ
・オオアオイトトンボ

 

・コフキトンボ (泉の森の池のところをポイントによく止まっています)

 

 

 

(最後に)

活動が人との出会いを生み、人との出会いが活動を広げていきました。2004年ハグロトンボ調査で552頭という結果が神奈川新聞に出たときに、おばあさんから電話をいただきました。「大和市絶滅危惧種」の冊子をつくった方で、新聞を読んで「ハグロトンボがこんなにいるとは信じられない」と電話で確かめたかったのです。その後もう一度電話があり「以前に作った『泉の森生き物カルタ』を紛失してしまったが、読み札のメモだけは残っているのでカルタを復活させたい、これがやり残したことだった」ということでした。半年後に「カルタ」は完成したとまたご連絡いただきました。この方との出会い、かわくだりのきっかけとなった森先生、三面コンクリート護岸をはがす力になってくれた大和市職員の方、トンボ調査指南の田口先生、また、「トコロジスト(ある場所の専門家)」を提唱された神奈川大学の浜口先生との出会いもありました。引地川の源流のある大和市からは下流にあたる藤沢市のグループの方、横浜市の方とも出会いました。川そうじからから始まった活動がトンボを復活させ、トンボ調査を行うまでになりました。引地川を通して本当に様々な出会いが生まれました。

 

 

 イメージ

 

 

FM やまと「大和市民活動センターだより やまとっこ☆みつけた」出演記録もご覧ください。
2011年7月5日  (柳とあそぼう引地川 トンボ調査班)
2010年7月20日 (引地川かわくだり実行委員会)
2009年6月16日 (引地川かわくだり実行委員会)
2008年7月8日  (引地川かわくだり実行委員会)

 

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