★第106回共育セミナー
鈴木貫司さん | 小川杏子さん | 船越英一さん |
「第106回共育セミナー(開催レポート)こども・わかもの参画 地域活動拠点に求められるもの」
第106回共育セミナーを2月17日(土)に、鈴木貫司さん(静岡県菊川市市民協働センター・NPO法人わかもののまち)、小川杏子さん(特定非営利活動法人パノラマ 子ども・学校連携事業統括)、船越英一さん(認定特定非営利活動法人NPOサポートちがさき ちがさき・さむかわこどもファンドプロジェクトリーダー)の3名をゲストスピーカーにお迎えして開催しました。
トークセッションの2部構成で行い、トークセッション1では、それぞれの事例発表。トークセッション2では、ワークショップ(各事例発表の感想と質問事項をまとめて、代表者がインタビュー)を行いました。
今回の報告は、「こども・わかもの参画 地域活動拠点に求められるもの」を開催するにいたった背景や、今後の課題を整理すると共に、当日の様子を参加者の感想などを中心にまとめて、今後大和市民活動センターが「拠点」(こども・わかものの居場所)としてどのように役割を果たしていくべきか、前向きに考えていくための大きな参考になりました。
2023年4月に、「こども基本法」の施行及び、こども政策を推進する「こども家庭庁」が設置され、「全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的な活動に参画する機会が確保されること。そして、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること」が明記されました。
今回の共育セミナーでは、
@「こども・わかもの参画」に先駆的に取り組まれている事例として、鈴木貫司さんからは、日常の実践報告として、「多様な人の参加・参画の機会」を提供する中でも、市民協働センターがハブとなって、地域と若者をつなげ、参加・参画をサポートする取り組みについてお話を伺いました。
A既存の枠組みからはこぼれてしまい、社会から見えにくくなっている若者を支援する取組みとして、小川杏子さんから、「小さなつぶやきをかたちに…」するにはどうしたらよいか、校内居場所カフェを運営する中で見えてくるもの、課題等について伺いました。
B船越英一さんからは、こどもたちが自ら気づいて、提案した事業を支援して、社会参画にワクワク感を持たせる「ちがさき・さむかわこどもファンド」の取り組みをお話しいただきました。
共育セミナーには、スタッフ含めて18名の参加を得て開催いたしましたが、各発表者の活動への思いが感じられる発表は全ての参加者に届いたと思います。後半のワークショップでは、各発表内容の感想を出し合うとともに質問事項を整理して、インタビューを行うという形式を取りました。
この場を共有した皆さんが、「こども・わかもの」の参画を自身のことと捉え、関心を持って活動するきっかけになれば大変うれしく思います。
菊川市市民協働センターHP わかもののまちづくり事業 |
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菊川市は、静岡県東遠地域に位置する都市で、気候は温暖で深蒸し茶の産地として知られている。人口47,544人(外国人市民3,954人 約8.4%)菊川市市民協働センターは日常的に市民活動を支え、更に活動の成長を促す拠点として、多様な主体的をつなぐコーディネーターとしての役割を果たしている。若者の参画に取り組むことができている背景としては、菊川市と市内にある2つの高校(県立、私立)と包括的な連携協定(フレンドシップ協定)を締結していることが大きく寄与しているようで、フリースペースには放課後多くの中高生が集まったり、私立高校の美術デザイン科の生徒が主体となって実践するアート教室、高校生、大学生、社会人で構成された「菊川まちづくり部」がユースカウンシルとして若者の声を集め、政策提言まで行うことを目標に活動するなどしている。昨年11月には、鈴木さんも所属するNPO法人わかもののまちが主催する「わかもののまちサミット2023にて、高校生を含む協議会委員と菊川市長が、「菊川市こども・わかの参画宣言」が発表されている。 |
NPO法人パノラマは、2015年3月設立し、神奈川県横浜市を中心に、高校生と若者が社会的に包摂される社会を目指し活動しています。パノラマ写真を「社会的包摂」のメタファーとして考え、「すべての人をフレームイン!」を合言葉にしています。 |
2022年度「海の輝きを取りもどせ!6−1ベンチDIYプロジェクト」という事業の完成記念写真。小学校6年生の1クラス全員で、ベンチの背もたれのプラスティックには茅ヶ崎市の西浜海岸で取ってきたプラごみが入った手づくりベンチを不動産屋さんの前に、歩行者の休憩用に設置した。 |
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「ちがさき・さむかわ こどもファンド」は、2022年に始まったこどもがチーム (3人以上、小学校3年生〜18歳)を組んで行う、主体的な活動を支える民間のファンドです。 こどもが考えたプロジェクト(まちをよくする活動)を企画して、予算計画をまとめて、プレゼンテーションをして、こども審査員 (小学3年生〜18歳) が審査して、採択されると活動資金(最大5万円)が提供され、こどもがプロジェクトを実行する仕組みです。 |
後半のワークショップは参加者が3グループに分かれて、各事例発表者への質問と感想を話し、代表者がインタビューをする形式で行いました。 |
後半のトークセッション2では、
○鈴木貫司さん(菊川市市民協働センター)の発表に対して
★高校生の居場所がにぎわっていることに驚いた
★子どもが「やってみたい」ということにチャレンジできる場や機会があってうらやましい
★そういう活動をしたい若者が沢山いて、えらいな
○小川 杏子さん(NPO法人パノラマ)の発表に対して
★必用なものを必要としている人に届けているように感じられる
★言葉の背景や言葉のこまかなところまで気を配っている
★小さなつぶやきは大事
○船越 英一さん(ちがさき・さむかわこどもファンド)の発表に対して
★子どもたちに地域に何が必要か、何ができるかを考えさせて、それをプロジェクトにしてまとめていく過程が非常によかった
★昭和時代に小中高を経験した。私にとって「こどもの社会参画」というキーワードがとても新鮮に感じた
★ソンタクしないのがよい などの感想が発表されました。
次に、ワークショップの参加者から事例発表者への質問はインタビュー形式で行われました。3例とも、どこの自治体でも行われて
いるわけではない、先進事例だったので、鈴木さんには、「どうやってこどもたちを集めたのですか」、「『やってみたい』が『やってみよう』になる最大のキーポイントは?」、小川さんには、「どうやって学校から信頼を得ていったのですか」、「関わる上で、何を大切にしていますか」、船越さんには、「スタート時と終了時で地域との関わりがどう変わりましたか」、「助成金の管理はどうしているのですか」、「選ばれなかったグループの子どもたちの様子はどうですか」などの質問が寄せられました。
また、それぞれが、大事にしていること、大事と思っていることについては、
●鈴木さんは、こどもがやってみたいと言ったことを「いいじゃん」と言ってくれる大人がいること。ぼそっと言ったことについて、大人が問いかけ、背中を押す、伴走していくことが大事。
●小川さんは、生徒に関わるときは、出来るだけフラットでいる。肩に力を入れないで、このままでいる。先入観にとらわれた見方をしない。
●船越さんは、こどもたちの提案に大人がはっとして気づくことが多い。ある意味、大人アドバイスは不要。子どもたちが気づくことで社会が変わっていくことが大事。「子どもが判断する」のが胆。
編集・文責:船越 英一 イラスト:望月 則男
セミナーの終わりに、鈴木さんが、「若者発」「若者主体」を大人がどれだけサポートできるか、かといって、大人が支援をするというのではなくて「一緒に社会をつくっていくパートナーだよね」という視点を持って、若者とかかわっていける社会になればと思って頑張っていると言われたのが印象的でした。 参加者の感想に「場所は違えど、思いは共通していて、大きな可能性を感じる」とありました。この思いは、他の参加者の皆さんも感じられたのではないでしょうか。 大和市民活動センターは、わかものとかかわりとしては夏休みの「このゆびとまれっ!」で、中高生と少し持っていますが一番手薄な部分です。大和市民活動センターも来年度で20周年を迎えます。これを機に何ができるか、みんなで考えていきたいと思っています。手始めに、市民交流スペースでの「わかものカフェ」開催します!? |
(この項文責:櫻井美紀子)